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05 Interview TAKATOSHI OGI

August 5, 2021
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人々が手にした作品を後世に残すために、「between the arts」が提案するアートの未来

「美術倉庫」と呼ばれるアート管理サブスクリプションサービスを運営する、「between the arts」の大城崇聡氏。日本初の試みとなるこのサービスは、アート作品をきちんと保管してくれるだけでなく、作品の情報管理から展示会運営の相談、梱包まで相談に乗ってくれて「STRAYM」も保有する多くの作品を預けている。現在「between the arts」が運営する「between the arts gallery」では、8月22日(日)まで「STRAYM」との共同展示会「STRAYM ON DISPLAY 2021」を開催中。国内外のアーティストたちの作品を展示しているので、是非足を運んでみて欲しい。ところで、新しい視点を持つ「between the arts」はどのような会社なのか、代表の大城氏に話を伺ってみた。(Interviewer : KANA YOSHIOKA)

―― 「between the arts」を始めようと思ったきっかけは何だったのでしょうか?

大城崇聡 元々アートを買っていたんですけど、買っている皆さんは大体そうだと思いますが、作品を自宅か会社か、ちょっとしたトランクルームに置いている方が多いと思うんです。それで購入年月や値段がわからなくなったまま、保管してしまっていることが多いと思うんですが、私もまさにその状態で、前の会社を辞めて引き上げるとなったときに、作品が部屋のドアから入らなかったり、作品の詳細がわからなくなるという問題に直面しました。そこでまず1カ所に集約して置いておきたいなと思い、置ける場所を探してたんですけど大抵は倉庫として1部屋を借りなきゃいけないんですね。

―― そうすると、家賃を払うことになりますよね。

大城崇聡 そうなんです。それで部屋を借りて作品を入れたはいいけど、持ってる作品の整理や管理、それと情報管理まで自分でするのは大変だなと思って、そこまで面倒をみてくれるところはないかと探したんですけど見つからなくて。そのときに自分みたいに困っている人たちがいるんじゃないかと思い、友だちや仲間に聞いたらやっぱり皆さん困っていまして。それでこれはビジネス化できるんじゃないかなと思い始めたのがきっかけですね。

―― 日本だと気候的に湿気も多いですし、部屋や倉庫を個人的に借りて保管したとしても、管理するのに手間がかかるのかなと思います。

大城崇聡 家でカビてしまうのは当たり前の話で、トランクルームでもカビてしまうことが多い。トランクルームって美術品は置けないと契約に書いてあるんですよね。それなのにトランクルームに平気で置いてしまう人が多い。トランクルームってコンクリートの上に直でシートやマットが敷いてあるだけなので、湿気も上がってきますし、私も実は作品をカビさせちゃったことがあるんですけど、自己責任なのでなにも言えなかったんです。アート作品って資産性のあるものだし不用品ではないので、徐々に価値も上がっていくものも当然あるので、そのときに環境って大事だなと思ったんです。

―― 作品によっても大きさも保管の仕方も異なるだろうし、個人ではどこまでしっかり管理できるか不安を感じる人たちも多いかと思います。

大城崇聡 皆さんいろんな事情があるので、最初は難しいなと思っていたんですけど、だからこそできる限りケアができるサービスがあるといいなと思ったんです。基本的には、我々はあくまで保管管理のサービスを提供しているだけなんですけど、そういうのがそれまでになかったというのがポイントだったのかなと思います。

―― どのようなシステムになるのですか?

大城崇聡 プレミアムとスタンダード、二つのプランを準備していているんですが、プレミアムの方を主軸に考えています。内容はアート管理に必要な環境である気温が20度に保たれていて、湿度に関しては人によって異なるんですけど、うちは50%前後に保っています。これが常に管理されているかどうかがポイントで、その上で倉庫業者と提携させていただいてます。あとはセキュリティ面で、誰も勝手に入れないようになっています。それと重要なのが防災設備です。スプリンクラーだと仮にボヤ騒ぎで発動した場合、水浸しになるのでそもそもよくないじゃないですか。なので、ガスで消化できる設備を基本的に選んでいるんですが、それがプレミアムになります。スタンダードは常温常湿、且つスプリンクラー。そういうことをやっているんですが、皆さん作品によって使い分けてますね。

―― 作品の出し入れも行われているのですか?

大城崇聡 日本の倉庫は倉庫業の方たちがやっていらっしゃって、基本的にお客様の荷物は触らないという設定になっているので、皆さん自分で運用しなくてはいけないんです。我々はその倉庫とお客様の間に立って、作品の出し入れとかも全部代行しますし、作品のデータの整理もおこなっています。あとお客様の中で評判がいいのが、今の時価がどれくらいかっていうのを推定する機能なんですが、そこまでやってる倉庫サービス会社は世界中を見ても存在しないと思います。

―― ところで大城さんが初めて購入したアート作品は何だったのですか?

大城崇聡 初めてアート作品を買ったのはKYNEさんですね。2015年の作品です。そのときは3万円ぐらいでした。氣志團の白鳥雪之丞さんがファッションブランドを始めたときにグループ展をやってらっしゃって、そのときにKYNEさんとコラボをしていたんです。KYNEさんが今みたいに売れる前なので、早すぎるコラボだったんですけど、そのときにKYNEさんが10号ぐらいの作品を3枚くらい展示してたんです。それを見たときに「いいな」と思って買ったのが初めてのアート作品です。そこから少しずつ買うようになって、5~6年経ったら置き場がなくなり、どうしようもなくなってしまったんですけど(笑)

―― 「between the arts」では、アート展のキュレーション的な活動もされているんでしょうか?

大城崇聡 我々はアートを管理するだけで、アートを語る立場ではないので、あくまで場の提供だけなんです。「between the arts gallery」での展示は、コレクターの方にキュレーションしていただいています。「between the arts」では、作家さんの作品もお預かりしていて、それに付随して無料で使えるポートレート機能などをウェブ上で提供したり、アート作品を入れる箱も作ったりしているんですけど、そのサービスの一環として、場の提供っていうのをやっているんです。アート展に関しては、我々が提供してる「artworks」という無料で使えるポートフォリオサービスを使ってもらい、好きな作家を選んでいただき我々がお声がけをしてマッチングすればそこでグループ展ができますよっていう感じですね。

―― 展覧会を行う際の、縁の下の力持ちのような感じですね。

大城崇聡 そうですね。場を提供したい方はたくさんいるので、我々はその方たちと作家の間に入って、展示までやって開催っていうところまできちんとサポートすることをやってます。アート展をやりたいけど、どうしていいかわからない方々はかなりいらっしゃって、面倒くさくなって辞めてしまう人が多いので、そこを一緒にやると皆さん一歩踏み出せるので、すごくいいことになる。現物のアート作品を見ることができるいい機会にもなるんです。

―― きちんと現物を観て購入したり、信頼のおける人たちがキュレーションする展覧会の作品を購入する流れは良いですね。

大城崇聡 私も今はどこで買うよりは、誰から買うかを重要視していますね。人ベースでマーケットは動き始めているので、どこどこの画廊で買ったほうがいいというよりは、ギャラリストやディーラーの誰々から買ったほうがいいという流れはありますね。

―― 目利きの方が「この作家はいいよ」と言ったものに価値を見出すというか。

大城崇聡 インフルエンサーと呼ぶのかわからないですけど、有名な方じゃなくてもインスタ上でアピールしている方も影響力はありますし、今はコレクターも意外とブランディングされてきていて、コレクターの名刺を持っている方も増えているんです。アートを買いたくてもなかなか売ってもらえないのが現実だし、数に限りがあるので、みなさん積極的にアピールしてますよね。

―― 「between the arts」のHPに「アートが身近になることで暮らしが潤う」とありますが、人々にアート作品をどのように扱って欲しいなと思いますか?

大城崇聡 きちんと資産としてみて欲しいですね。一番嫌なのが、自分とその界隈の方は価値が理解できるけど、家族とかがまったく価値が理解できないという状況。万が一自分が死んだとき、その作品は捨てられるか、二束三文で売られるかどっちかになる可能性があるんですよね。もう悪でしかないと思うんですけど、そういうことは山ほどあると思うんです。作品が安く取引されてしまったり、でも海外ですごい金額で売りさばかれることも当然ありますし。そういったことが起こらないように我々は情報をきちんと管理して、物自体もきちんと管理することがポイントなのだろうなと思っています。

―― 作品の管理をすることって大事ですね。

大城崇聡 そうなんです。証明書、納品書、領収書とかは取っておくべきですけど、無くしてしまったときのことを考えてデータ化しておくとか。あと初めて買ったときの箱が一番真贋鑑定に大事だったりするんです。そのときのギャラリーのシールが貼ってあったり、作家のサインが入ってることもあるので。アートって面白いのが、作品を飾ると箱から出すので荷物が2個に増えるんですよ。10枚の絵を持っていて飾ったら、10個の空き箱があって、その箱も資産価値に入るので、保管するスペースは取り続ける。なので、空箱だけを預預かることもあります。

―― 「between the arts」は新しい考えだなと思いますが、アートを所有するという点で「STRAYM」も新しいなと思います。「STRAYM」をどう思いますか?

大城崇聡 上手いなと思いました。アートって登記するわけではないので自由に取引ができるんですけど、それに対して丁寧なサービスだなと思いました。それと金融的に捉えられていらっしゃって、雑に共同保有ではなく、きちんと金融的に設計されているので安心だなとも思いました。あと選んでらっしゃる作品に馴染みがあるものが多いのでいいですよね。アートを買うのに勇気が出ない方たちが利用されることが多いのかなと思うんですが、馴染みのある作品があることで買いやすいだろうなと。

―― 「between the arts」で「STRAYM」の展覧会も開催されるようですが、どのような内容を考えていらっしゃいますか?

STRAYM長崎 有難いことに作品がどんどんと増えているので、前回の展覧会で展示していなかった作品を中心に展示させていただいています。それで第1期は国内のアーティストの方々を中心とした展示で、第2期に関しては海外のアーティストの方々を中心の展示を行います。今回出す作品に関しては8割方、「between the arts」に預けているんですよ。

大城崇聡 この場所を「STRAYM」さんへ無料で提供して、我々が倉庫から作品を持ってきて、指示いただいた内容で配置するという感じですね。

―― 展示会のタイトルは何ですか?

STRAYM長崎 「STRAYM ON DISPLAY 2021」です。STRAYM展示中というニュアンスで、一方で冷やし中華やってます、みたいな感じのノリでタイトルを考えました(笑)。ともかく「美術倉庫」に預けていれば、このギャラリーを使わせていただけて、アートの額装とかも全部やってくれるサービスもあるし、展示する作品の配置までご提案いただけるので、そういった面では本当に最高のサービスだと思います。展示作品の配置ってすごく悩むんですよ。作家さんの数も多いのですごく助かります。

―― 「between the arts」で今後やっていきたいなと思うことは何でしょうか?

大城崇聡 預けるものをたくさん持っている方たちだけを相手にするのではなく、アート作品を持っている全ての人たちが頼めるサービスにしたいと思っています。例えば作品を10点しか持っていない、もしくは預けるものがなくても、ご登録いただければアートコレクターとしてのいろいろな楽しみを味わえる……データだけ登録したら、その作品の価値が見れるだとか、そういったサービスに今後していけたらいいですよね。自分が持っている作品の現在価格はいくらなんだろうとか、モチーフによってどれくらい違うのかとか、作家の作品はオークション出ているのかなど。皆さんがもっとアートを買いやすい環境にしていけたらいいですね。

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